星に願いを 








「はぁ〜い。どいてどいて〜邪魔ですよ〜危ないですよ〜ぶつかりますよ〜」


司令部の廊下をずるずると大きな荷物を抱えながら歩いている。
廊下を歩いていた人々はみな壁にぴたりと背をつけてその少女を通した。
その大半がなんだ?なんだ?と目を丸くして少女の背を見送った。


「おいちょっと待て!


ただ呆然と見送るしかしない人々をかき分け声を掛けたのはハボック少尉。


「あ。ハボック少尉おはようございます」


ペコリとお辞儀をして挨拶をすると、 の持っていたものがワサァ〜っとハボックに覆い被さった。


「う、わ!やめろ。いて〜よ!」
「あ!ごめんなさい」
「つーか何なんだよこれは?!」
「え?ハボック少尉知らないんですか?笹ですよ〜?」
「んなこた知ってんだよ!俺が聞きたいのは何でこんなもの司令部に持って来てんだってこと!」
「ん〜。だって貰っちゃったんだもん」
「だれに?」
「いつもお世話になってるおばあちゃんにね。正直困ったけど捨てるのも勿体無いし、かと言って家には置けないしサ。だったらいっそのこと司令部に置いちゃえって思って☆」
「おまえなぁ・・・」
「良いじゃないですか♪こういうのも楽しいでしょvv
 ほら、短冊もバッチリ買ってきましたからみんなで願い事書きましょうよ♪」


嬉々として言う彼女が無邪気に笑って、とても楽しそうで、可愛らしくて、微笑ましかった。


(マジ、可愛いなぁ・・・・)
(・・・こんなこと言ったらあの面倒な上司に燃やされるから言えないが・・・)


こんな楽しそうな彼女の楽しみを奪うことなんてできるわけがない。
ふぅっと、一つ息を吐き言ってやった。


「しゃ〜ね〜なぁ。書いてやるよ」
「そうこなくっちゃ☆」


は満面の笑みをして執務室の扉を開いた。






















「しかし、随分とりっぱな笹ですね」
「でしょ〜?大きいと華やかだよね♪」


とフェリー曹長は執務室の開いてるスペースに置いた笹に他の飾りを付けながら会話している。


「しっかし七夕か〜。何年ぶりだろうなぁ?ガキん時ですらあんまやらなかったけど」
「七夕は『子供たちの祭り』や『恋人たちの祭り』という意味をもつと聞いたことがありますぞ」
「んあ〜?願いかぁ・・・何っスかなぁ〜。う〜む」
これはここにつるしていいかしら?」
「あ、はーい。良いですよ」


他のメンバー達はそれぞれ短冊とにらめっこしてたり、思いに浸ってたり、説明しだしたりと休憩がてら七夕の準備を手伝いだした。


「牽牛と織姫が年に一度の7月7日の夜に天の川を渡って逢えるんですねvv 晴れるといいですよね〜」
「そうだな。雨が降っちゃ〜。天の川が溢れて逢えるもんも逢えねぇもんな」
「よし!短冊に絶対晴れますようにって願い書いておこうっと♪」


早速と、短冊にペンを走らせ始めた を全員が温かく見守る。
大人ぶって見せても本当にこの子はまだ10代の子供なのだと。























「なんだ?これは・・・」


夜勤の大佐が昼過ぎに司令部に来て執務室の扉を開いて発した第一声。
ぽかんと口を開けて大きな笹を下から上へと見た。
ちょうど皆出払っていて部屋に居たのは のみ。
その問いに答えるのは彼女しかいない。


「何って?笹です。七夕用の」
「お? ああ、七夕か。なるほどな」
「大佐も短冊に願い事書いてくださいね〜」


はい。っと は短冊を大佐に渡した。

「うむ。願いか」
「はい。皆にも書いてもらいましたよ」
「どれどれ?」


大佐は笹に吊るされた部下の願いとやらを見始めた。



ジャン・ハボック・・・『彼女が欲しい!!美人で優しくて!さらさらロングヘアー☆』


「・・・まだいないのかあいつ」
「みたいですね(汗) 紹介してあげたらどうですか?」
「一度誘ったが、奴から断ってきたぞ?」
「あ〜(それは多分。付き合ってた彼女だったからですよ。要は大佐に取られた。ってたしか少尉がこの前ぼやいてた気が・・・)」
「どうした?」
「いいえ何も」



ケイン・フェリー・・・『健康』


「・・・彼らしいと言えばそうだが。しかしもっとこう・・・な?欲とかないのか?」
「いいんじゃないですか?フェリー曹長らしくて♪」



バトー・ファルマン・・・『休暇』


「疲れているのか??」
「そりゃ・・・どっかの馬鹿上司から仕事押し付けられてたら疲れるでしょうね」
「ぅっ・・・!」
「可哀想・・・」

じと〜〜〜っと大佐を睨みつけると冷や汗を掻いてわざと目線をそらした。



ハイマンス・ブレタ・・・『給料UP!!!』


「ああ〜これは。司令部全員の願いですね。大佐頼みますよ!」
「しらん。 それに には関係ないだろ?国家錬金術師だから」
「そうでもないですよ?研究費用と生活費用は別でしょ?だから少尉の地位だと辛いものがあります」
のためなら善処するが。他はなぁ・・・・」
「大佐!差別はいけないですよ〜?」
「ははは、聞こえんなぁ」
「ひどっ!」



リザ・ホークアイ・・・『仕事をサボらない有能な上司』


「ちゅ、中尉!!?」
「さすが中尉・・・。ほんと程ほどにしないと頭に風穴開きますよ?」
「そ、そうだな。それはまずい」

ここまでこの大佐を震えさせる人は中尉以外にはいない。
さすがだなぁ〜。尊敬しちゃうよ。やっぱ中尉のように強くなりたいなぁ

「ちょっと待て。
「はい?」
「今、中尉みたいになりたいなどと思ったか?」
「あらら?何で分かったんですか?」
「いや、勘だが・・・勘弁してくれ」
「うふふ〜。あなた次第ですね!頑張ってください」
「・・・!!」







「さて、みんなのを見て回ったわけですけど大佐の願いは何ですか??」
「待て。 の願いは?」
「あ〜。私の願いは織姫たちのために『明日が晴れますように』って」


「・・・・それだけ?」

と大佐が首を傾げれば、

「それだけ。ですよ?」

も大佐と同じ方向に首をかしげた。


「・・・・」
「?」

「・・・
「は――





ちゅっ





―――いぃきゃああ!!!?」



いきなり大佐は頬にキスをしてきた!
突然のことに妙な悲鳴をあげてしまった。

立っている位置のすぐ後ろは机になっていて後ろへは逃げれない。
しかも今は、大佐が目の前にいて動ける状態じゃない。


「なな!何すんですか!!?」
「『それだけ』・・・ではない気がするのだが?」
「な、何がですかぁ!!///」
の願い」
「だから私の願いは織姫と牽牛のために!!」

「では・・・




 私と のためには何も願わないと?」





「!!」


大佐が少し悲しそうな顔で言った。





そういう顔は卑怯だ・・・







しょうがないなぁ。もう・・・




はふわりと大佐の胸へと飛び込んだ。







「たいさ・・・ロイさんの願いは何ですか///」







顔を上げれば、嬉しそうに頬を緩ませて微笑んでいる私の大好きな人。




と同じだよ。 こんなこと言ったら織姫たちに嫉妬されそうだけどな」








私と一緒。



それは・・・










「ずっと」「ずっと」










「傍にいて欲しい」「傍にいさせて」










「離さない」「離さないで」










「ずっと」「ずっと」















貴女と   貴方と 










   一緒に。
































  <End>


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きゃあああぁぁぁぁ///素敵っ素敵すぎ!(五月蝿い
ヒロインが可愛いのよ!
というか文がすごくまとまって
いらっしゃって、尊敬してます!

響さん素敵夢小説を有り難うございましたv