君とイヴと星空と 〜br side〜


「ごめーん」
たたた、と七原がこちらに駆け寄ってくる。
12月24日、クリスマス・イヴ。
世の中の恋人たちが一年で一番浮かれる日。
「遅ぇぞ七原ー」
いつもの、三村特有の笑顔でお出迎え。
後ろにはお馴染みのメンバーで杉村・国信・豊がいる。
「悪ぃ、遅れ、ちまった…」
ぜぇぜぇと乱れた息を整えながら、七原が謝罪する。
「いいよいいよ、たったの5分じゃん。それにしてもシューヤが遅刻してくるなんて珍しいねぇ」
豊が、ニコリと笑いながら自らの疑問を呟く。
「いやぁ、その…ちょっとな…」
「何俺らには言えないこと?あらあら七原君は何してたのかなぁ?ん?」
「うるせぇよ三村」
おもしろそうに自分を茶化す三村を七原は冷たくあしらう。
あらヒドイわぁ、などとどこかの誰かさんの口調を真似するそいつに「キモイ」と止めをさした。
「なぁなぁ、クリスマスツリーってどこにあるんだ?」
そんな二人のやりとりを片目に、国信が皆に問いかけた。
「えっとねー…商店街の四つ角のところにあるっぽいよ」
豊が「Merry Christmas!」と大きく書かれた広告を見やりながら言う。
「あ!すごい!今日花火も上がるんだってさ」
「花火か…」
杉村が空に向かってほぅ…と息を吐く。
急速に冷やされた白い吐息が空の色に混ざり消えていった。
「「花火?」」
三人から少し離れた場所でギャーギャー言っていた三村と七原が、声を揃えてこちらを振り返った。
「今12月だぜ?ずいぶん季節外れなモンやるんだな」
「マジで?俺冬の花火なんて初めて見る…」

突然夜空が光ったかと思うと、七原の声を掻き消すような音が鳴り響いた。

「うわっ花火始まっちゃった!」
「げぇ!早く行って場所取んなきゃな!」
そう言うやいなや、豊と国信はクリスマスツリーのある商店街へと走り始めた。
その後を杉村、七原、三村の順に続いた。

「おっきー!!」
「すげぇー!」
ツリーの前まで来ると、国信と七原が口々に自分の感想を叫んだ。
およそ10メートルほどであろうクリスマスツリーは、五人が思っていたよりもずっと大きかった。
意外なことに、建物が建ち並んでいるここでは見えないと思っていた花火も、上手い具合に建物の隙間から見える。
「なぁ杉村、すげぇ綺麗だな!すげー!」
まるで子供の様に同じ言葉を連発する七原が、杉村に自分の思いをぶつける。
「あぁ、綺麗だな…」
しばらくその花火を見ていると、ツリーの後ろから「七原ー」と言う声が聞こえてきた。
声の主は三村。
「何ー?」
その声に気づいた七原が、三村のもとへと歩いていく。
杉村は、七原に聞こえないくらい小さな声で、「頑張れよ」と呟いた。

ツリーの後ろに来ると、三村が嬉しそうに笑って手招きしている。
「何だよ?お前花火見ないの?」
「いや花火よりも大切なことがあってさ」
「?」
三村の言うことの意味が理解できず、首を傾げる。
「メリークリスマス、七原」
三村が左手に持っていた紙袋をを七原に投げてよこした。
「っうわっ!」
突然のことに驚きながらも、なんとか袋をキャッチする。
「何だよコレ」
「いいから開けてみて。俺からのクリスマスプレゼント」
「…え?…マジで?」
「マジで」
「嘘だろ?」
「嘘なワケねぇだろ。いいから開けてみろって」
急かされながらも袋を開けると、中には温かそうなマフラーが入っていた。
「あ」
「どうした?」
「俺もお前にクリスマスプレゼント買ってきたんだけど…」
最後の方の言葉を濁しながら、七原も鞄の中から紙袋を取り出す。
「開けてみて」
「?あぁ」
その袋を開けると、そこには自分が上げたのと色違いのマフラーが入っていた。
「…もしかして……」
「…二人して同じヤツ買っちゃった、ってことだな…」
七原がニヤッと笑うと、三村もニヤッと笑い返した。
「七原」
「何?」
「お前、今日これ買ってたから遅くなったのか?」
「バッ…!違ぇよ!」
図星だったのか、顔を赤らめてそっぽを向いてしまう。
「図星だな」
「違う」
「そうなんだろ」
「違うって」
「嘘つけ」
「嘘じゃねぇよ」
「嘘なんだろ」
「ホントだって」
「バレバレだよお前」
「〜〜っ!言えばいいんだろ!あぁそうだよ!これ選んでて遅れたんです!」
耳まで真っ赤にさせて、拗ねたように背を向けてしまった。
「可愛いな」
「っ!誰が」
「ホント可愛いよ、お前」
「嬉しくねぇよ、そんなこと言われたって」
「七原」
「今度は何だよ?」
「こっち向いて」
他の三人は花火に夢中でこっちに気がついていない。
今がチャンスだ。
「七原」

七原が振り向いた瞬間、驚いて目を見開いている彼にキスを、した。

「来年はさ、二人で来ようぜ、ここ」

もちろんこのマフラー巻いてさ。
な、七原――。



Merry Christmas、
あなたのもとにも、最高のプレゼントが届きますように――…。


-fin-


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い、いい頂いちゃいました(どもるな

azure boyのアオコさんから頂きました!
ちょっと奥さん、三七ですよ!!えへへ(ぉぃ
七原可愛いんですけど!
有り難うございました!!