七原秋也と中川典子がBRゲームを脱出してから1ヶ月と少し経った頃だった。
秋也は、典子と少し離れた場所でうずくまっていた。
「秋也。泣いてるの?」
そんな秋也に典子は声をかける。
「あぁ、典子か。なんでもないよ」
「本当に?」
「典子さ、今日が何の日だか分かるかい?」
「何の日?」
「7月3日なんだ」
そう言って顔を上げた秋也の目は、赤くなっていた。
僕はそこで涙を流した
「三村くんね」
「あぁ、そうさ」
秋也は再び膝に顔を埋めてもごもごと言う。
「分かるだろ?典子たちが言ってたんだもんな」
「そうね」
典子は寂しそうに笑む。
“さて問題です。七原、今日は何月何日?”
秋也の耳に、三村信史の、今はもう聞けなくなってしまったそれが聞こえる。
あのとき、秋也はその問に“3月7日”答えた。
そしてそれにはまた別の意味があった事を彼に聞かされた。
それが日常で、普通で、当たり前のように感じていた。
その日からまだ半年も経っていないと言うのに――
「三村くん、それに幸枝やみんな…もう、居ないのね」
――それは、3Bの日常は、あっという間に、崩れ去ってしまった。
皆、死んだのだ。
三村信史までもが。
そしてそれは秋也が殺したも同然だった。
実際殺していなくとも、生き残ったものが殺した、となるのだ。
BRゲームでは。
“俺が上だよ、ベイビ”
いつか、信史が秋也にそう言った事があった。
おいおい、7月3日だぜ。
今度こそ俺が上になったのに。
お前が居なくちゃしょうがないだろ。
馬鹿、が。
寂しいよ。
置いていくなよ。
離れていくなよ。
何でお前この世に居ないんだよ。
お前だけには、生きていて欲しかったのに。
一緒に、この日を笑い合いたかったのに。
三村の事、
大好きだったのに。
秋也は自分の目頭が熱くなるのを感じた。
少しして涙がぽろぽろとあふれ出した。
「典子、ごめん、俺っ、三村が好きだった」
ノブに代わって典子を守り抜くと決めたのに、それでも三村の事を思わずには居られない。
自分でもどうしてこんな事を言うのかが分からない。
しかし今、秋也は感情を抑えきれる状態でなかった。
「どうしよう、三村、もう居ないんだよな。死んだんだよな。俺が、俺がっ」
「秋也」
パニック状態へ陥りそうな秋也を典子がなだめる。
「秋也の所為じゃないわ。ううん、誰の所為でもない」
「助けられなかった!三村を! 俺は生きているってのに…!」
それから、秋也は言った。
「俺、あのとき死んだ方が良かったのかな」
「馬鹿な事言わないで!そんな事無い!そんな事…三村くんが望んでるはずがないでしょ」
「そ、そうだよな。ごめん、俺、どうかしてた」
典子はふんわりと微笑んだ。
「三村くんは、もう居ないけど――」
あいつを見る事も、声を聞く事も、一緒に話す事も、もう、出来ないけど――
――“73Day おめでとう”
そして秋也は声を上げて泣き始めた。
・・・・END・・・・・・・・・
37Dayとは違った雰囲気でお送りしました。
BGMは静かな日々の階段をで。
05/07/02 19:20