エイプリルフールって知ってる?
嘘ついても良い日なんだって。


四月馬鹿


わたくし、は只今、
幼馴染み三村信史の家に遊びに来ています。


春の日差しが暖かい今日は四月一日。
エイプリルフールである。
春休みの終わりも近づいた今日、
特にする事もないことだし、と信史の部屋へ上がり込んだ。
中学生男子の部屋へ平気で出入りするのもアレだが、
信史もそれを許しているのだからどうって事無い。

何をするでもなく、ただ漫画を読んだり、
ぼーっとしたり、他愛もない会話に花を咲かせたり。

あぁ、そうだ…
信史の部屋には平気でエロ本が置いてあったりする。
別に気にもしないけど。
前に一度聞いた事があった。
『こういうのって面白いの?』
『別にたいしたこと無いよ』
それで会話は終わってしまったが。


あたしは漫画を一冊読み終わった所で、ふうーっと伸びをして、
ベッドの上でごろごろしている信史に、ぽつりと言った。

「この前のテスト、国語ね。あれ、百点取っちゃった」

いや、嘘ですよ?
ただ今日はエイプリルフールだって事で言ってみたかっただけ。

すると信史は
「ふーん、そう」
と言っただけだった。

あたしとしては、もっとこう、
「えー!」とか「マジかよ?!」とか、
そんな反応が欲しかったんですけども。

「ごめん、嘘」
「うん、だと思った」

だったらそう言え…!


「貴子と杉村、やっぱり付き合う事にしたんだって」

「そうなんだ、おめでと」

「…嘘です」

「だろうね」
と言うと信史は、
枕の横に置いてあるバスケットボールを手に取り弄び始める。

何がしたいんですか信史くん。
分かってるなら、さっさとつっこんで下さいよ。

「何でそんな反応するかなぁ?」

「んー?だって今日エイプリルフールなんでしょ?」

「…知ってたのかぁ。くそー」


このままではなんだか悔しい。
何か、この天才信史くんが引っ掛かるような良い嘘はないか。


あ…これはどうだろう。


「信史」
「何、?」
信史が顔だけこっちに向かせる。

「この前さ七原ん家に遊び行ったじゃん」
「うん、行った行った。それが?」

「で、信史先に帰ったでしょ?何かバスケ部の事とかで」
「帰ったなぁ、そう言えば」

未だにボールで遊んでいる信史。
あの、指でボールをくるくる回すやつ。
よく出来るよなぁ。

「あのあと、七原に…」
一旦そこで間を置く。

「七原に?どうした?」

信史から目をそらす。
恥ずかしがってるようにね。


「七原に、ヤられた…」


「……はぁっ!?」
がばっ・と信史がベッドから飛び起きる。

「ほら、あたしだってか弱いオンナノコだし?」
あー我ながら言ってて恥ずかしくなってきた。

「いや、お前がか弱いかどうかは知らねぇけど」

ふざけんなオイ。

「マジで…?」

お、引っ掛かった?
ここで「嘘」だなんて言ったらもったいないな。

「う、うん、ほんと」
出来るだけ恥ずかしがってるように
―いや、実際恥ずかしいんだけど― 言った。


、お前馬鹿か!」
いや、馬鹿はお前だ信史。

「な…んで、何でそんな事を俺にすぐに言わないんだよ!?」

「え、え、だって…」
お…怒ってる?
どうしよう、ここまで信じちゃうとは。


そして信史は、
「あぁ、もう、ちくしょうっ」と言うと、
立ち上がって机の方へ行き
その上にある携帯電話をひっつかんだ。

ピ、ピ、ピ、と直ぐさま電子音が鳴る。

とぅるるるる…。

「もしもし、三村だけど!七原ぁ?」

げ、七原に架けたのかよ!
あぁ〜本気にしすぎ!!
どうしよ、どうしよ。


―『うん、俺だけど、どうした?』

「どうしたもこうしたもねぇよ!今すぐ俺ん家に来い!!」

―『ど、どうしたんだよ?』

「いいから!」

―『分かった。すぐ行くよ』


ぶちっ。


少しの間、沈黙が続く。
あたしは怒っている信史から少しでも離れようと
ベッドの方ににじり寄った。

「し、信史…?何も呼び出さなくたって」
「あぁ?お前嫌じゃねぇのかよ?」

いや〜、“嘘”だし。
どうも言えないんですけど…。

「嫌、って言うか…」

、まさか、…良かったのか?」
少し震え気味の声で聞く。

「ばっ…!あたしが七原とヤって
良かったなんて言うはず無いでしょ!?」

「だったら何で!」

言えない。
ここで嘘だなんて言えない。
少なくともあたしはそんな図太い神経持ってない。

あたしがしばらく黙っていると。

「じゃあ」
と、信史があたしに近づく。

そしてそのまま、

押し倒された。

「え?…え?!ちょ、何すんの!」


「俺とヤっても構わない?」


眼が本気だ。
まさか信史がこんな事言うなんて。
もう、あんな嘘つかなきゃ良かった!

「構うよ!超構う!!」
そう言ってあたしは信史の下でもがく。

「七原とヤっても良くて俺は駄目なんだ」

「っそんな事、言ってない!」
「じゃあ良いじゃん」

誰か助けて…!!
この状況を何とかして下さい!


“ピンポーン”


丁度、神からの恵みとも思えるタイミングで呼び鈴が鳴る。

「おにいちゃーん、七原君!」

「分かった、七原俺の部屋来い!」

「おじゃましまーす」

良かった、と思ったのもつかの間。
信史は依然としてあたしの上だ。
この状況は端から見ればもろ信史が襲っているように見えるだろう。

「退いてよ、信史」
「やだ」
「だって七原来るでしょ?!」
「俺は構わないけど?」


「入るよー」
と、そこで七原が入ってくる。


まず始めに七原の目にはいるのは
信史があたしを押し倒している様だろう。

サンっ!?三村、何やって」


そして信史はやっと退く。

「七原、お前こいつと、ヤったんだって?」
単刀直入に聞く。

「は?何で俺がサンを?」

「とぼけてんじゃねぇよ、よくもお前」
今にも掴みかかりそうな勢いの信史。

「とぼけてなんかいないよ、サンどういう事なの?」

もう、言うしかない、か。
「ごめんっ!!」

「え?」

「嘘なんだよ」

「う…そ?」

「そう、今の話は全部嘘!だってエイプリルフールだもん」

信史のこの驚いた顔。
笑っちゃうね。
なんて、笑ってられる状況じゃないですけど。

「七原もごめん、何か巻き込んじゃって」
「い、いや、別に良いんだけど。何があったの?」

あたしはあらましを説明した。
あたしが何の嘘を付いてもばれてしまった事。
良い嘘はないかと思って“七原にヤられた”と言った事。
それに信史が引っ掛かり、怒った事。

「そうだったんだ、じゃあ、俺は別に悪くないんだよね?」
「うん、ほんとごめんね」


その間信史はしばらく惚けていた。
そしてだんだん理解が出来てきたようで、
自分のした事の恥ずかしさに少し頬を赤らめていた。

「マジかよ〜〜〜」
信史は頭を抱え込み部屋の隅に行く。


「じゃあ俺は帰るね」
と、七原はそっと部屋を出て行った。

本当に、七原には申し訳ない事をしてしまった。



「しーんじ」
彼の肩をぽんぽんと叩く。


、ごめん。俺が馬鹿だった!!
簡単に引っ掛かって、にあんな事しちまって!」

「別に、良いよ。さっきの事は。
でも、まさか信史があんな嘘に引っ掛かるとは」

「最悪だ。俺、最低の男だ」
こんな信史初めて見た。

「だから良いって。それにしても、あんな事したって事は
相当たまっちゃってるんじゃないですかぁ?」

「う、うるさい!
俺はただ、七原にが取られたと思ったらカッとなっただけだ」

「それって、愛のコクハクってヤツ?」

「んなんじゃねぇよ」

「うん、でもなんか。そう言う風に言ってもらえると嬉しいや」

「え?」







エイプリルフールって知ってる?

嘘ついても良い日なんだって。


でも、嘘の内容に気を付けないと、

大変な事になるかも知れないよ。




...END..........






あとがき



よくわかんねぇ。。

兎に角、七原に嫉妬して
ヒロインを押し倒す三村が書きたかったんです。

ほんと私の七原は不幸な役回りが多いですね(汗
正直、七原本人は三村に呼び出されて
嬉しかったりしてます。
三村の家に行くのもウキウキです。
でも、ヒロイン襲ってる(ような)
三村を見てプチショック。(笑

書いてるときにヒロインの名前の所に
自分の本名入れちゃって焦りました(爆

変な所いっぱいなので、また今度修正入れるかも知れません。

では、お目汚し失礼致しました(逃走


05/4/1 22:58  リョウコ