その日の休み時間、あたしらの会話。
内容は、「趣味」。
同じクラスになってもう結構経つのにこんな話題。
今更のように語り合ってた訳だ。

「ねえ、あたしたち、同じクラスになってから随分と経ってるじゃない？」
と、典子ちゃんが次の授業（国語だっけ）の準備をしながら言った。

「うん、そうだけど」
それを見て慌てて教科書を引っ張り出しているあたし。
引っ張り出したら、少し周りを見る。
信史、七原、貴子、杉村、で、あたしと典子ちゃんがいる。
まあ、いつもの仲良し組がいて。

「でね、実はあんまりお互いのことよく知ってないと思って」
「と、言うと？」
「趣味とか。あたし、の趣味知らないわ？」

「あー趣味ねー」
少し首をかしげた。

「貴子ー、ちょっと会話混ざって。趣味だって」

「なに？趣味？良いわよ」
と、貴子が快くやってきた。

「貴子趣味ってある？」
そもそも、あたしと貴子は同じクラスになる以前からの付き合いだったが、
よくよく考えてみれば、お互いの趣味を話すことなど無かったかも知れない。

「趣味って言えるのか分からないけど、シルバーアクセが好き、良く集めたりするわ」
「わぁ、格好いいね！」
典子ちゃんが手を合わせて言った。
シルバーアクセ…確かに、貴子そう言うのよく持ってるなぁ。

「格好いい？ありがとう。　弘樹、ちょっと」
貴子が杉村に手招きをしたので、あたしも
「信史と七原もこっち来いよー」と、呼んだ。

「おーう、何かな、マドモアゼル？」
と、一番先に信史がやってきた。
何言ってるんだろうこの男。

「何だ、貴子？」

「いま、趣味の話してたんだけど、弘樹の趣味は？あ、あれ、格闘？」
「あぁ、そうだ…。答えようとしてたのにお前が言うなよ」
「悪かったわ」


「七原くんの趣味は？」

七原と話せてそんなに嬉しいかい、典子ちゃん？

「え、俺？やっぱりギター、かな…？」

「七原らしいな」
と、信史。

「野球は？」
これはあたし。

「野球ももちろん好きだよ。けど、今はギターかな。ていうか、ロック」
「あぁ、ロックね、なるほど」


「そうだ、典子サンの趣味は何なんだい？」
「あたしは…、詩を、書くことかしら」
「あら、典子こそ可愛いじゃない」
「えへ、ありがと」

「詩かぁ。七原へのかい、典子サン？」
「な、何言ってるんだよ三村！そんなワケないだろ」

「案外、違ってなかったりしてー。ね、典子ちゃん」
「も、もう、！やめてよー、三村くんも！」

あらら、お二人とも顔赤いですよ。


「そう言うの趣味は？」
と、杉村が聞いてきた。
そうだ、肝心のあたしが答えて無いじゃないか。

「んー、と言ってもあんまり趣味って物がないんだよなぁ」
少し考えるそぶりを見せる。そぶりというか、実際考えてるんだけど。
「絵、描くの好きだけど。あ、あと…寝てること？」

「絵が趣味ってのは分かるけど、寝るって、趣味？」
典子ちゃんに笑われた。

「らしいわね、良く授業中寝てるもの」
「だってさぁ、ほんと寝てるときが一番幸せって感じなんだもん」

「確かに、サンの趣味は居眠りかもね」
「居眠りって言うな七原」
「あ、ごめんよ」
「うん、別に良いけど」


「三村、どうしたんだ？やけに口数が少ないじゃないか」
「え、あぁ、次は俺が趣味言わなきゃいけないかと思って考えてた」

「じゃあ、聞かせてよ信史の趣味って奴を」
「やっぱり三村くんの趣味はバスケじゃない？」
「パソコンってこともあるかも知れないわよ」
典子ちゃん、貴子が各々の意見を口にする。
言われてみれば、信史はバスケなんじゃないか。

「俺、まあ、確かにバスケは好きだな」

「ほら、やっぱりバスケだったわ！」
「他にはないのかい、三村？」

少し間を置き、言った。
「…あとは」

｢｢あとは？｣｣
５人の声が重なる。
見事なハモりですよ、ちょっと。


「寝ること」


『あー…』
頭の中でささっと理解した。
きっと他の４人も同じ気持ちじゃないか。

「寝ることって、と一緒なのね」

典子ちゃん分かってなかった！
あ、あの、えっと、それはですね…。なんと説明すればよいのやら。

「中川、こいつの考えていることは、ちょっと違うはずだ」
「え、そうなの、杉村くん？」
「あぁ。　なあ、三村？」

「やだなぁ、みんなして、そんな」
あはは、と胡散臭い笑みを浮かべる信史。

「最低だな、三村」
「嫌な男ね」

「まあ、こういう奴だとは知ってたけどさ」

「あー、までそんなこと言う訳？」
「言っちゃ悪い？」
「意外との“寝る”も、そんな意味だったり？」
「お前の腐った脳内と一緒にするな」

「今度一緒に寝ます？」
「もう一度言う。お前のその腐った脳味噌を」

“きーんこーんかーんこーん”

そんなこんなで、授業開始を告げるチャイムが鳴った。


分かったことをまとめてみようか。

趣味。

貴子は、シルバーアクセ集め。
杉村は、格闘技で。
七原が、ロック。ギター。
典子ちゃんが、詩を書くこと。

あたしは、絵を描くのと、寝ること。
信史は、バスケと、寝ること。

あたしと、信史のは同じに取らないで欲しい。全然違うから。






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05/05/11　22:50　　リョウコ