放課後の教室。
皆部活に行ったり下校したりして
教室内はしんとしている。
けれどもその教室にひとり残って
本を読んでいる生徒がいた。



初めての会話


“ガラッ”

扉が急に開いた。

「あ…サン?」
ビックリした…。だっていきなりドア開いたし。
「‥‥。」
わたしちょっと固まってた。

「何、読んでたの?」
今まで別にこの人―三村信史―とは話した事がなかった。
同じクラスだけど。

「え、あぁ、鋼の錬金術師。って、知ってる?」
「あぁ。でもソレってマンガだよな?いいのか、学校に持ってきて?」
「あ、知ってるんだ。そうなんだけど、これ小説版なの。」
「ふーん」

ちょっとばかし三村君を見つめて、思い出した。
この人、かなりの女たらしだって光子が言ってた。
―――『、三村には気を付けなさいよ。
    貴女可愛いから何されるか分からないわ。』
あ、わたし光子や貴子とは仲良いんだよね。
気が合うって言うか。まあそんな感じ。

しばしの沈黙。

「何で、家に帰らずに教室に残ってんの?」
三村君が聞いてきた。まあ聞くのも当たり前か。
普通部活のない人はみんな帰ってる時間だし。
「誰もいない教室って静かだから、
家にいるより落ち着いて本読めるんだよね。」
「へぇそうなんだ。」

「こっちも聞くけど、何で…
あ、三村君って呼んで良い?」
そう言えば、何でわざわざ君付けるんだろ自分。不思議。

そう聞いたら三村君は、気取った感じで(女たらしの癖なのかな
「えぇ、結構ですよお嬢さん。何なら名前で呼んで、信史でも?」

ちょっと引いたかも…。
「‥‥。三村君って呼ぶね。」
「あら、そう。」
気取った感じじゃなくなった。

「で、三村君は何で教室に戻ってきたの?」
「え…あぁそうだった!
俺さ、傘、取り来たんだよ。忘れてた。」
「へぇ〜傘ねぇ。」
と言ってわたしは、窓の外を見た。
本当だ雨がザァザァ降ってる…

って

「えぇぇ!?雨降ってる!やべぇっ。」
ずっと本に夢中だったから気付かなかった。

サン、もしかして、傘持ってねぇの?」
「うん…。どうしよう土砂降りの中帰れないよ〜!」
一人パニくっているときに、三村君が冷静に言った。


「う〜ん。じゃあ、俺の傘入ってく?」

「え?」

「だから、俺の傘に入っていくか?って。」


ちょっと待って下さいよ。
今日初めて会話したような男子と相合い傘ですか?

「どうすんだよ?」
「う゛ぅ〜。」
「あ〜相合い傘は嫌だって事?」

そう、そうだよ。
何?心でも読んだワケ?

「でも、濡れて帰るのも嫌だろ?」
「そうなんだよね。うん。

…じゃあ、お願いします。一緒に入れていって。」

「OK。どうせ俺ん家の方向だしな。」

俺ん家の方向・って…。

「何でわたしの家の場所知ってんの!?」
しまった、つい思ったまま口に出してしまった。

「そりゃあクラスの女子の家ぐらい全部把握してますよ?」

これは、流石って言うべきなのかな?
まあ、こんな雨だ。しょうがない。
これも何かの縁だと思う事にしよう。


  * * *


外に出てみるとやっぱり凄い雨だった。

「さ、行こう?」
「うん。ありがと。」

そう言ってわたしは三村君の傘に入れてもらった。
あぁやっぱ中1のわたしらが、一つの傘だと狭いなあ。
そんな贅沢言ってられないけど。

「狭くてゴメンな。サン、もっと中に入りな。」
「え、別に良いよっ。それに三村君濡れちゃうじゃん。」

「別に俺は良いよ。それに、
女性を傘からはみ出させる訳にはいかないからな。」
「…ゴメンね。」
「良いの良いの。」

しばらく無言で歩いてた。
すっごい緊張して、心臓バクバクいってます。
だって、学年でもかなり人気の男の子の隣にいるんですから。

「…っ、くしゅっ。」
あ、しまった。くしゃみが…。
やばい、風邪ひいたかな。

「大丈夫?寒いの?」
と、三村君は、
わたしを腕の中に引っ張った。
すっぽり入った。案外わたし小さいんだ…
って、ちょ、ちょちょちょっと待て!

「み、三村君!?何っ?」
「いや、暖めてやろうと思ってな。」

こんなの慣れてないわたしには正直きついよ。

「あれ、顔赤いね。熱も出て来ちゃった?」

この人、わざと言ってるんだろうか。


雨は、

降り続いてる。


  * * *


「ほんっと、ありがとう。」

家まで送ってもらってしまった。

「良いから、気にすんなって。風邪悪くすんなよ。」
「うん。待ってて、今タオル持ってくるからっ。」
「あぁ良いや。このまま帰るから。じゃ、また明日。」
「え。うん、また明日ね。」
帰っちゃったよ。明日もう一回お礼を言おう。



何だったんだろ。ほんとに。
教室でばったりあっただけなのに、家まで送ってくれるなんて。

三村君っていい人だ。
学年の女子達がキャーキャー言うのも分かるかも。

って、なに言ってんだわたし。


『じゃ、また明日。』

明日もまた話が出来ると良いなぁ。






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あとがき…と言う名の、言い訳。


もう半ば強制的に終了ですよ。
突発的に書き始めて、ダラダラと伸ばしていったんで、
設定がぐちゃぐちゃに…(いつもそうじゃん

と言うか何というか、傘持ちながらを腕に抱くって
どうやったんだ!?三村っ!キモイって…。
でも、同じクラスなのに1度も喋った事無いって凄くない?(聞くな

何か続きが書きたいとか思ってます。
なので、暇があったらこの続きを書きます。多分ですよ。
これのボス(桐山)バージョンも書きたいなぁ(無理

もう言い訳やめます。ごめんなさい。


04/11/15 19:13 リョウコ