7月7日 PM6:15 くもり

川田章吾は、そんな灰色の空を窓から眺めると、本日何回目かの溜め息をはいた。
そしてひとりごちる。
「こんな日まで曇らなくても良いじゃないか…」

すると。

“ぴんぽーん”

少し間の抜けた電子音のそれは、玄関から聞こえた。来客者だ。
川田はのろのろと立ち上がると、玄関へと向かった。

「はい、どちら様で…」

がちゃり・と扉を開けばそこには、
「かーわだ!誕生日おめでとう!」
クラスメイトのが立っていた。















   くもりのち・・・















「紅茶とコーヒーと、どっちが良いかな?」
「いやいや、お気遣い無く。ごめんねいきなり来ちゃってさ」
「いや、良いんだが。とりあえず座ってな。じゃあ、紅茶で良いか?」
「あ、じゃあ頂きます、ども」

をソファに座らせ、川田は切り出す。

「で、何で俺の誕生日を知っているんだいお嬢さん?」
「信史から聞いた」
「その三村は?来ないのか?」
「バスケの大会近いんだってさ」

は鞄から何やら取り出そうとしている。
「それよりね、誕生日っつー事で何かプレゼントをと思ったんだけどさ、川田の欲しいもの分かんなくて。だからとりあえずケーキ買ってきたよ」

そしてケーキの入ったその紙の四角い箱を、テーブルの上へと置く。

「あ、ああ。ありがとう」

「あれ、もしかして甘いもの駄目とか?ありゃー、ごめん」
は顔の前で両手を合わせ謝るポーズをする。

「いや、平気なんだが。その、大丈夫なのか?」

「何が?」
質問を質問で返す。

「お前、、一人で男の部屋とか来て大丈夫かって話」

「なんだそんなこと。だいじょぶだいじょぶ。信史の部屋にはしょっちゅう行くしね」
そこで一口紅茶を飲む。

「おいそりゃちょっと無防備ってもんだぜお嬢さん。三村も俺も男なんだぜ?」

「何かするつもりならそん時は全力で抵抗しちゃいますけど何か?」

「おお、怖いねぇ」



はそこでふと窓の外へ目をやる。
そんなを見る川田。

そういや、授業中もよくあんなふうに外を見てるな。


「くもってるね今日」
「そうだな誕生日だからって晴れてはくれないもんだな」

「今日って七夕だよ」
「ああ、知ってる」
「晴れてたら良かったのに」

「しょうがないさ。天気なんてもんはな。 すまん、ちょっと良いか?」
川田はそう言って煙草(ワイルドセブンだ。七原のそれ)をすっと取り出す。

「あぁうん。良いよ別に」

暫くの間。
煙草を消し、川田話もう一度悪かったな、と言った。

「だーから、別に良いのに」
「いや煙吸ったら悪いだろ」
「てかアンタ、中学生よね?」
「・・・ま、まあな」



は脇に置いておいた箱を引く。
「ケーキ食べる?」

「じゃあ、頂こうかな」

「お皿二つ出して」
「お嬢さんも食べるんだな」
「あたしが買ったんだよ。食べる権利有り!」
「はいはい」

そして、川田はショコラケーキを、はチーズケーキを、食べた。


「あ、そうだよ、川田。プレゼント、何にしよう?」
忘れてた、と

「何でも良いぜ?」

「あのねえ、その何でも良いってのが一番迷うんだって…!」

「そうか」
じゃあ、どうしようか、と考える川田。

「いいや、これから一緒に買いに行かない?そしたら川田の欲しいもの買えるし」

「こんな時間だけど良いのか?」

時計を見ると既に6:40だった。

「良いよ良いよ。川田が平気なら」
「俺は大丈夫だが」

「じゃ、行くか!」



がちゃり・と再び扉を開く。

「ちょっと、待て
「え?何?」

「上、見てみろ」
「上がどうした…の…って、あ!」

先程まで空を覆っていた灰色の雲は姿を消し、星が瞬いていた。

「晴れてるじゃん!うわぁ、天の川見えるし!すげぇ!」
「女の子なのに、すげぇはどうかなお嬢さん」
「うっさいな。信史みたいなコト言わないでよ」
「おい、こういう状況で幼馴染みの名前を出す奴が居るか?」
「ここにいる。つーかこういう状況ってどういうイミさ」

「・・・。 どうする?買い物行くか?」
「え、行かないの?」

「せっかく晴れてるんだ、部屋入って天体観測でもしようぜ?」
「あ、良いね! でも、川田、プレゼント…」
「良いよそれは。ケーキももらったしな」

そして三度扉を開け川田家に入る。



「アレが夏の大三角形だ」
「へぇ」
「わし座のアルタイル、こと座のベガ、はくちょう座のデネブを結ぶ」
「へぇ」
「って何だ。分かんないのか?」

「いや、分かるよ。望遠鏡だし」
「じゃあ、何だってへぇへぇ言ってんだ?」

「川田、こんなに星とか詳しいんだなと思って」
「何言ってんだ俺は天文学者の息子だぜ?」
「え、医者じゃないの」
「嘘だ」
「馬鹿」


「俺、今日、が来てくれて良かった」
ぼそり・と言った。
それはただの独り言だったかも知れないし、そうでないかも知れないが、それはの知る範囲内ではなかった。

「そう?」

「なんか、が来たら晴れたしな」
「あたしのおかげじゃないでしょ、それ」

「くもってたまま誕生日終わったらどうしようかと思った」
「別にどうもしないっしょ」

「いや」
「何かあんの?」


「織り姫と彦星が出会えなくなるだろ?」


「ぷっ」


「何で笑うか、そこで?」

「だ、だって川田が、あんたの口からそんな言葉を聞けるなんて…!」










7月7日 PM7:00 

            くもり

       のち


                晴れ










「川田」

「ん?」

「ハッピーバースデイ」

「…サンキュ」



・・・・・・・・・・・END・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



意味ぷー。
あわわ、台詞ばっかりで終わり。
そして話はまとまらず。
さらに今日7月9日(逝け

05/07/09 0:38