いつもの見慣れた体育館。
足もとには、白いビニルテープでコートの線が引いてある。
それも体育館のほぼ全面を使ったコートだった。
「うわ、結構広く使えんじゃん」
三村信史は体育館に入ると開口一番そう言った。
ドッジ・ロワイアル 2
「じゃあ、チームを発表するからな。Aチームの人は右、Bチームの人は左のコートに移動してな」
担任林田が、何やら紙を持って言った。
と言っても、周りはざわざわとしていて、聞いている人は少数だった。
「先生、そのチームってどうやって決めたんですか?」
「適当に、だよ、」
「へぇ」
「は三村くんのチームが良いんでしょー」
「典子ちゃん? なに、違うよ、むしろ同じになりたくない」
「そりゃ無いんじゃないの?つれないなぁ」
「だまってろ、変態」
「え、変態?それこそ無いんじゃないの?」
「ほら、言うから、静かにしなさい」
「へーへー」
クラスメイトの視線が林田へと向けられる。
「まずAチームからな。男子から言うぞ。
飯島、大木、川田、桐山、国信、倉元、滝口、月岡、新井田、沼井、元渕だ」
「ボス、一緒だな」
「良かったな」
「あらー、三村くんはこっちじゃないのねー。寂しいわー」
「ほら、今呼ばれた男子は右側のコート行けー。 次、女子な。
稲田、江藤、金井、榊、相馬、谷沢、千草、天堂、中川、あぁ有香の方な。それと、南」
呼ばれた生徒はぞろぞろと右側へと移動した。
「あと呼ばれてないやつはBチームだ、でもまあ一応言っておくぞ。Bチーム男子。
赤松、織田、黒長、笹川、杉村、瀬戸、七原、旗上、三村、山本だ」
「三村、この前のクラスマッチ以来だな」
「だな、また俺らのコンビネーション炸裂ってか?七原」
「女子は、内海、小川、北野、日下、琴弾、清水、中川典子、野田、藤吉、松井、矢作」
「知里、良かったじゃない、三村と一緒のチームよ?」
「も、もう、やめてよ幸枝!」
「恥ずかしがんないーって」
すると。
「あれ?あたしは?」
良く聞いていたが、にはどうも自分の名前が聞こえてこない。
「え、は…言ってなかったか?」
「言われてませーん」
「は、あぁ、Aだな。ごめんな」
「いーえー」
―なんか、札付きの奴らばっか偏ってる気がする…。まぐれ?
Aのメンバーを一通り見ては思った。
―ああ、でもそうでもないかも。桐山ファミリーとか光子のグループとか、一応分かれてるし。
それにしても、なんか変なチーム。
は自分のコートへ移動し、そして相手コートを見渡した。
―七原に杉村に信史、か。明らかにあっちの方が強いだろ…。勝てる気がしねぇ。どういう分け方したんだ。
「。同じチームになれて良かったわね」
「貴子!そだねー。ああ、お互い幼馴染みとは離れてんのね」
「ホント。バシバシ当ててやるわよ。 弘樹覚悟しなさい!」
「おうおう、杉村クン、あんなコト言われちゃってますぜ」
相手コートで杉村弘樹を信史が肘で小突きながら言った。
言わせといてやれ・と半ば苦笑い気味に弘樹は返していた。
「じゃあ、誰かジャンケンしろー。勝った方がボールな」
Bは、内海だそうだ。委員長だからと言う理由で半ば押しつけられ気味に決まったらしい。
では、Aは――
「向こうは幸枝みたいだし、こっちも委員長の元渕くんが良いんじゃないかしら」
可愛らしい声色で光子が提案した。
しかしどうも、ただ決めるのが面倒くさく、手っ取り早く終わらせたいという気が感じられた。
「まあ、良いけど…」
元渕も元渕で、光子に断りづらいらしい。
光子に見つめられて顔が心なし赤くなっていた。
「俺がやる」
「「え」」
数人の声がハモる。
桐山和雄だったからだ。
「なんでさボス、元渕にでもやらせときゃ良いじゃんか」
「充、俺がやってはいけないのかい?」
「い、良いけどよ…」
「じゃ、桐山で良いんじゃない? 桐山、ヨロシク」
「ああ、分かった」
――Aは、桐山和雄となった。
「さ、よく桐山くんに話出来るね」
の耳元で金井泉がこそりと言った。
「だって、そんな怖がる事ないじゃん。何もしてこないよ?」
「そ、そうだけどさ…」
「そうそう。お、ほら、ジャンケンするみたいよ」
次回ジャンケン大会(違います
05/06/30 21:28