今日はバレンタインデー。
女の子が好きな男の子にチョコを渡す日。
最近じゃ“友チョコ”の方が多いかもしれないけどね。
はっぴぃばれんたいん
自慢じゃないけど(いや、自慢かな)俺は例年通り紙袋三つほど、
ファンの子達からチョコをもらった。
でも、実は今日は、俺もある奴にチョコを渡そうと思ってる。
三村信史。
俺と同じように(ひょっとしたら俺よりも)
チョコを山ほどもらってる奴だ。
それだけもらえるのは、やっぱり顔が良いからだ。
三村は格好いいと思う。
男の俺からチョコを渡すってのは変かもしれないけど、
外国じゃそういうのもあるらしいから。
兎に角俺は、三村を探しに行った。
「瀬戸!」
丁度廊下にいた、瀬戸に声をかけた。
「あ、シューヤ、何?」
「三村、何処にいるか分かるか?」
「シンジ? シンジならさっき階段の方に行ったよ」
「ありがと」
廊下を曲がって、階段の踊り場に、いた。
声をかけようと思ったけど、やめた。
そこには、三村と、三村の幼馴染みがいたから。
何故か俺は、壁の陰に隠れた。
二人ともお互い、『好きじゃない』とか言ってるけどさ…。
あ、ほら今だってチョコ渡してる。
「あんた、沢山もらってるから
あたしのなんていらないと思ってたんだけど」
「いや、もらう。ありがとな」
なんだよ、あの三村の嬉しそうな顔は。
悔しい。これは、ヤキモチかな。
二人が、帰るみたいだったから、とっさに呼びかけてしまった。
「あ、三村っ!」
「「え?」」
二人ともふり返った。
「七原、どうした?」
「あの、ちょっと良いかな…?」
「あたし、待ってようか?それともお邪魔?」
「あ、いや、別に…。」
「良いよ良いよ。信史、先下行ってるね。」
「おう。」
「‥‥‥。」
何故、二人きりになると、こうドキドキするんだろう。
「で、用は何?」
「今、チョコもらったの?」
あぁ、話そらしてる、俺。
「そうそう。アイツ、料理上手いからどんなのか楽しみ」
「そっ…か。あのさ。」
「ん?」
えぇい、勇気を出せ七原秋也!
「俺も…俺もチョコ渡そうと思って…!」
「へ?マジで、俺に?」
「う、うん。」
「七原の手作り?」
「お、俺のは、上手に作れてないかもしれないけど…」
きっとあんな嬉しそうな三村は見られないだろうけど。
「ホントかよ!うわ、マジで、サンキューな!」
え…?うそ…。
この顔だ…。
「ごめん、三村は他の女の子達のチョコがたくさんあるのに…」
何で、謝るんだろう。
「いや、お前の奴をいっちばん始めに食うよ。」
「ホントかい?」
「ホ・ン・ト!だって俺、お前からもらえてスッゲ嬉しいもん」
嬉しいのはこっちだ、チクショウ。
あぁ、やば、嬉し泣き…。
「え、え?何で泣くんだよ、女子じゃあるまいし」
へぇ、女子はこういうときに泣くんだ。
てゆか、泣かせた事あるんだ三村。そりゃあるか。
「な、何でもないよっ!」
そういって俺は、三村の横をすり抜け、階段を下りていく。
「おい、七原!」
三村が呼びかけた。
「え、何?」
あぁ、きっと顔真っ赤に違いない。
「ありがと。お前のそういうとこ好きだから」
これで何人の女の子落としてるんだ。バカ三村。
「また明日なっ」
「う、うん」
「チョコ食い過ぎて鼻血出すなよ!」
「出さないよっ、そっちこそ!」
「そーかもな、じゃあな」
「ばいばい」
と言って、俺は階段を駆け下りた。
上から、三村がゆっくりと降りてくる音が聞こえる。
昇降口で、幼馴染みサンが待っていた。
「あ、七原、話終わった?」
「うん、待たせちゃってごめんよ。ばいばい」
「そう、また明日」
俺は、もう誰かと話が出来るような状態じゃなかったから、
急いで靴を履いて校舎を出た。
きっとこの後二人で帰るんだろうな。
やっぱり、三村はあんなこと言ってるけど、
俺はあの子にはかなわないんだろう。
でも、
あの時の三村の喜んだ顔を見られただけでも、
良かったのかもしれない。
うん。最高、幸せだ。
...END................
あとがき。
きもいな。撃沈だ…。
ホントはチューさせちゃおうかと(ぇ)思ったけど、
げろ甘くなりそうだったんで却下しました。
分かった方もいると思いますが、
これは表の三村夢とシンクロさせてあります。
三村は浮気もんです。
でも、まあ、“七原愛してるv”ってワケでもないので…。
ちょっと許して下さい。
紙袋三つ分も貰う人って本当にいるんですかね。
今更、書いてから疑問に思いました。
では。
05/2/9 22:09 リョウコ