彼、川田章吾がこの城岩中3Bに転入してきて、
まず始めに思った事、それは、


『老けてる』


だった。





それは特別な





「今日から新学期だ。
まあ2年からクラス変えもなかったし、特に変わった所もないんだけどな」
と、担任の林田の声が教室に響く。

「しかし、いつもと違う事、それは…転校生が来た!」

「おぉー」
林田の言葉にクラスが一瞬どよめく。

あたしは、一番窓側の後ろの席で、
別にどうでも良いな、なんて思いながら外を眺めてたけど。
そしてだんだん眠くなってきて今にも欠伸が出そうだったけど。

「じゃあ、川田、入って」
“がらっ”
ドアが開き、転校生が入ってくる。

短く切られた髪、がっしりとした体、鋭い目つき。
その外見に一瞬クラスに緊張が走る。

「転校生の川田章吾くんだ。みんな仲良くするんだぞ」
なんて、おなじみのセリフを言いながら、黒板にチョークで
“川田章吾”と書く(音が聞こえた、見てないんだから)。

「家の事情で転校する事になりました。
どうぞ、よろしくやって下さい」
低くて落ち着いた声だった。

あたしはそれでも窓の外を眺め続けていた。

「じゃあ、川田の席は…あぁ、あそこが空いてるな。
あの窓から2番目の後ろの席な」

窓から2番目の後ろの席…
それは今あたしが座っている席の隣。
誰も座っていない席で。
つまりあたしの隣に来る訳で。

あたしはそこでやっとその転校生の方を向いた。

そいつはまっすぐ席に向かって歩いてきた。

目があって、すぐに思った。
『こいつ、老けてる…』
失礼かも知れないけど、本当にそう思ったんだから仕方ないだろう。


椅子に座って、あたしの方を向いて、
「よろしく。えっと、名前…」
と言った川田には、どことなく七原秋也や、
もっと言うと三村信史みたいな雰囲気があった。

「え、あぁ、
えっと、川田?だっけ。よろしく」


、お前いきなり不愛想にしてんじゃねぇよ」
少し離れた席から、信史の声がした。


「うっさいな、これがあたしの性格なんだからしょうがない」

そう言い返すと、横の川田は少し笑った感じで
「仲、良いのか?」と、聞いてきた。

「ん、あー、まあね。幼馴染みだからさ」
「そうか」

そこで一旦会話は途切れた。

「じゃあホームルーム始めるぞー」
と、林田が言ったからだ。




しばらくして委員長の内海幸枝が「気を付け、礼」
と言うのと同時に皆一斉に川田の机の周りに集まった。

いつの時代も何処の学校も、転校生というのはこういうものなのだ。


あたしは席を立たずに、また、窓の外を眺めた。
別に転校生と会話に花を咲かせたかった訳でもないし。

ちゃーん」
この声は信史だ…。

「何?」
振り向きもせずに答えた。
だってこいつのために振り向くのさえ面倒でしょ。

「お前、川田の事どう思う?」
「なんで?」
「えー、だって幼馴染みとしちゃ、
がどういう反応するか気になるもんっ」

もん、って…。

「どう思うってったってなぁ。
老けてるなぁとしか思わなかった」
「うわっ何それ失礼!」
「だって…」

「川田ー!」
信史はくるっと向きを変え、後ろにいる川田を呼んだ。

「何だ?えっと…」
「あ、俺三村信史」
「あぁ、ありがとう。で、何だ?」
が、お前のコト老けてる・だってよ」

男子はどうしてこういう事をすぐに言ってしまうのだろうか。
まあ、別に怒ったら謝ればいいかと思い、川田の方に視線をやった。
すると、川田は困ったように笑っただけで、
なんのお咎めも無しだった。

あたしはその表情を少し見つめていた。


ただ、

何となくだけど。



“きーんこーん かーんこーん”


チャイムが鳴って皆急いで席に着く。

「ほら、信史も早く自分の席に行きな」
「えぇーだって俺川田くんともっとお話ししたーい」
「うるさいから早く戻れ」
「……オーケイ。大人しく戻るよ、ベイベ」


そんなやり取りをしているあたしらを見て
川田はまた少し笑った。

「ベイベ、なんて言うのか?」
「うん。あんま気にしない方が良いよ」
「いや、でも、あいつモテるだろう」
「あーうん。なんで分かるの?」
「そんな感じがした」
「そ。 何、フェロモンでも分泌してんのあいつ?」



授業が始まった。
と言っても今日は始めの日なので、
提出物を出したりすればもうそれで終わりなのだが。

春の日差しが暖かくて、あたしは何度も欠伸をかみ殺していた。


しばらくして、やる事も終わり帰る時間になった。

荷物(ほとんど何もないが)をまとめて、さっさと教室を出て行く者。
久しぶりにあった友達と話を弾ませ、教室に残っている者。

あたしは前者だ。
別に、女子達ときゃぁきゃぁ話しているよりかは、
家に帰って寝ている方が、有意義ではないか。

今日は部活もないため、信史と豊と一緒に帰る。
信史に至っては、ほぼ手ぶらだった。

教室を出て、ある事に気付いた。

「信史、豊、ちょっと先行ってて?」
「いや、待っててやるけど」
「うん待ってるよ俺たち」

「そう、ありがと」
と言って、教室に戻る。


そして、

まだ他の男子に囲まれて盛り上がっている川田に、

「また明日」と。

それだけ言うと、

すぐに教室を出て行った。



――なぜだか、そう言いたかった。

――なぜだか、帰る前にもう一度彼の顔を見て行きたかった。

――なぜだか、他の子達と同じに見られたくなかった。


。また明日」

後ろから川田の声が聞こえた。


――なぜだか、彼にとって、“特別”になりたかった。



それは、彼が幼馴染みの信史によく似ていたから?


     違 う 。


かも…知れない。


よく分からないけど、兎に角そう言う事なのだ。




...END..........





あとがき。


なぜだか、突発的に川田が書きたくなった。

でも、これ、夢? え? 夢なの?
おもっきし三村夢っぽい…orz
1時間半ぐらいで出来た…。

と、一応これ三村夢の方のヒロインと設定一緒ですが、
別物ですので、ご安心下さい。浮気じゃないです。
固定ヒロインって奴にちょっと挑戦してみたかったんです、はい。
設定一緒だから書きやすい!!
意外だ〜!今度からBR夢はみんな固定で行こうかなー。

あぁ何かこういうの書くと無性に続けたくなる…。

では、誤字脱字等ありましたらご報告下さい。


05/3/29 23:15  リョウコ