は。
どうして桐山、お前こんな時に出てくるんだ?
もうちょっとで、あいつら政府を出し抜けたのに。
もうちょっとで、このゲームからおさらば出来たってのに。















     届かぬ想い















体が痛てぇ。
そりゃそうか、鉛弾入ってんだから。

信史は隣でぐったりとしている―生きていてくれよ―豊から離れ、
銃を手にして、農協の中へ入った。

桐山、俺を追ってこい。頼むから、俺を、追ってこい。


桐山は、信史の思うとおり、追ってきた。
マシンガンを手にして。

信史の耳には絶えず、ぱらららら、という音が聞こえてくる。
そしてその度信史の周りの物、あるいは信史の体の一部が、抉られていく。

痛っ…足がっ…!
こりゃ、もう、駄目だな。
バスケが、出来やしねぇ。


物陰に隠れる。
桐山からは死角になっている場所だ。

ここもいつまで保つか。


ふとそこで、信史は幼馴染みのことを思い出した。


そういや、、違うクラスで良かったな。
もし同じクラスだったら…ぞっとするぜ。

俺、今生き残らない方が良いのか?
ここでいっそ死んでしまえばいいのか?

だって、もし、逃げられたとしてだ。
もう、には会うことが出来ないだろう。
じゃあ、もし俺が優勝したとしよう。
クラス全員を殺した俺を、は受け入れてくれるだろうか?


ぱららららっ…!
また信史の周りの壁や床に弾がはじけていく。

外に、出なければ。
ドアまで、走るのに何秒?
鍵を開けるのに何秒?

信史は頭の中で、とっさに計算をする。

そして信史は走り出した。
鍵はすぐに開き、信史は外に飛び出した。

次の瞬間、農協の建物内で、爆発が起きた。
ザ・サードマン特製の強力爆弾が。
本来なら、坂持らがいる分校を爆破するためのそれが。
そしてその威力は充分だった。


これなら、成功してたな。


そのものすごい音に、信史の鼓膜は耐えることが出来なかった。

今、鼓膜イっちまったかな。
でも、今のでもう、桐山は…。



“ねぇ”



なんだって?
聞こえないはずの俺の耳に、声が聞こえた。



“信史、死ぬなよ”






、か?
はは、俺の頭ももう駄目んなっちまったか。

桐山を倒したと、今まで張っていた気を緩める。
そして信史は物思いにふける。


あぁ、そういや、お前に謝らなきゃいけないことがあったな。


すまない。借りた漫画を返していなかった。

すまない。今度の休日出掛ける約束してたのにな。

すまない。もう、会うことが出来なくて。

すまない。一緒に、生きていけなくて。










信史は頭の中で連呼する。


今更だけど、言っても良いよな?
俺、もうすぐ死ぬだろうし。

そこで信史は、目を瞑り、深呼吸をした。
口の端から、こぽ・と、血が流れ出した。


俺、さ。



お前のこと、 好きだったと思う。



幼馴染みとしてもだけど。
それ以上に。


また一呼吸した。
杯がおかしくなっているようだった。
変な音がしてくる。


は、何を言ってんだよ俺は。
ホントに今更だぜ。

もうお前に会えないなんてな。
信じらんねぇよ。


そして目を開く。


え…?


信史の視線の先、壊れた建物の前に、桐山が、立っていた。


おいおい、どうしてだよ?
なんで生きてるんだ、お前?


後ずさる信史。
背中が何かに触れる。
それは、トラックだった。

桐山は無言でマシンガンを信史に向ける。


あぁ、俺、まともな恋なんかしてなかったな。
のこと好きだったけど、コレは、恋って、言えないよな。
それとも、人を好きになったらそれだけで、それを恋と呼んで良いのか?
既に三人の子と寝てる俺だけど、には、想いを伝えることもしてないんだぜ?
やっぱり、俺には勇気がなかったのかな。
もし、に、好き・と言えたら、たいしたもんだぜ俺。

俺が、今、最期なんて、、知らないよな?

、俺は、お前が好きだぜ。

今までも、そして、これからも。
俺に、これからなんて、ないけど。


桐山の指が、引き金を引いた。


信史の、おかしくなった耳に、先程まで聞き慣れた
ぱらららら・という音が、かすかに聞こえた。





end






あとがき

ひぃぃー、すみませんすみません。
なかなか書き終わらず、こんな時間になってしまいました。
いっそ、彼の死ぬ時間、12時過ぎまで書き続けていれば良かったですか…。

原作とは、ちょっと違っていますが、夢、ということでお許しを。
台詞とか、似せてあるところもありますが、多分間違ってるところ多々です。
なにしろ今、手元に原作がない状態なので(ぇ

ですが、ね、愛で書きましたから(言ってろ
…ごめんなさい、許して下さい。

今度、修正加えると思います。

05/05/22 23:05  リョウコ