−ずっと君を−




執務室に二人の楽しそうな声が響いていた。
一人はここアメストリス国軍の東方司令部司令官である、ロイ・マスタング大佐。
もう一人はそのマスタング大佐の部下であり恋人でもある、大尉。


「大佐、仕事ちゃんとしてますか?書類全然減って無いじゃないですか」
そう、彼の机の上には書類が山積みになっている。
それも朝から高さが変わっていないのだ。

「なにを!今は休憩しているだけさ大体なんで私の所ばかり仕事が回って来るんだ!!」
子供っぽい言い訳の仕方には微笑する。

「ふふっ。あ、コーヒーでも飲みます?」
彼女のこういう気の利く所が、ロイに好かれた理由なのかも知れない。
「あぁ、頼むよ」
はコーヒーを煎れに、休憩室に歩いていった。

正直はコーヒーが苦手だ。
あの独特の香りが嫌なのだ。
だが、恋人であるロイのために煎れるのなら多少の我慢はする。

『うっ、でもやっぱりこの香り嫌だなぁ』



「はい、熱いですから気を付けて下さいね」
そう言ってはロイにコーヒーを手渡す。

「ありがとう。は飲まないのか?」
「・・・わたしコーヒー飲めませんから」

何やら恥ずかしそうに言うにロイは
「ははっは可愛いな」
と、言ったものだから、の顔がぼわっと赤くなる。

「ななな、なんでそうなるんですか、たい」
「大佐っ大変です!」
の言葉を遮り扉がバタンと開く。
同じ部下であるジャン・ハボック少尉が、慌てた様子で入ってきた。

「・・・何が大変なんだねぇ?ハボック少尉ぃ」
二人きりの時間を壊されたためか、ロイはあからさまに怒っていた。

「すっすんませんっ!」
「で、一体どうしたんですか?」
今ので落ち着いたがハボックに尋ねた。

「え、あ、大尉。それがある村が暴動を起こしたらしく、鎮圧に行くと、命令です」
それを聞いたらロイも真剣な顔になり、残っていたコーヒーを飲み干し、すぐに両手に発火布をはめた。
発火布というのは国家錬金術師であるロイが、焔を錬成するために使う物だ。

「すぐに向かう、急いで隊列を組め!、君は私の護衛に付くように」
「はいっ」
も急いで準備をしに行く。

「何か、嫌な予感がするのは気のせいだろうか…」
ロイが小さな声で言った。



村へ行ってみると村人達は軍人に向かって叫んでいる。
「来やがったな軍人どもめ!」
「お前達がしっかりしない所為で、俺たちがどんな目に遭ってるか分かってんのか!」

「随分な言われ様だな」
「いかがなされますか?大佐」
ホークアイ中尉だ彼女は銃の扱いがとても上手い。そのため皆からの信頼も厚い。
いわばロイの右腕だ。

「かなり興奮しているようだな」
興奮しているとなると迂闊には手を出せない。
すると、何処からかロイ達の所に何かが投げ込まれた。

『あれはっ爆弾かっ!!』

すぐに気付いたロイは部下達に伝える。
「皆、逃げろ!」

“ドーーーン”

気づいたのはやはりイシュバール戦に参戦していたためだろうか。
今ので軍人達は一時体勢を崩していた。
今こそ・と言わんばかりに村人が襲いかかってくる。
軍人達は何とかそれに応戦する。


「くそっ煙で何も見えないな・・・?何処だ、大丈夫か!?」
「いてて、此処です。大丈夫ですよ」

ロイは急いでの元に駆け寄る。
一瞬だが二人は安堵の表情を浮かべていた。
が、そこにも村人が襲いかかってきた。

「大佐っ危ない!」
はとっさにロイをかばう。
すぐにロイは発火布を構え、攻撃しようとしたが躊躇った。
そこにいたのはナイフを持った小さな子供だったから。

「お前らなんか死んじまえっ!」

「うそっ・・・なんで・・こんな子供まで戦わなければいけないの!?」
は悲しみと怒りの混じった声で誰に向かってでもなく、言った。

だが、なおも子供は達に向かってナイフを振り回している。

“パキン”

ロイは威嚇に子供の前に炎を放った。
子供はヒッと悲鳴を上げてナイフを振り回すのを止めた。

「中尉達の所へ行こう」
「そう、ですね」
その子供を置いて二人はさっきいた場所へと、未だ煙の残っているその道を、歩き始めていた。


「何ですか?」
「私はさっきから何か嫌な予感がしてならないんだ」
「そんなこと無いですよ。あ、中尉達だ!」
「そうなら良いのだが」



“ドン”



遠くから銃声が聞こえた・・・。



「‥‥‥ロイっ!」





 * * * 





銃声が聞こえて、隣で彼女の叫び声がして、すぐに振り向いて燃やそうとした。

しかし振り向き目の前に見えたのは、自分の身に纏っているのと同じ色青い服。

自分が愛している人の青い服だった。




が撃たれた。
ロイに向かって撃たれた弾からロイを護るために。

ッ!!何故っ?!」

「だって‥わ‥たし、ロイ‥の、ごえ‥い、だから‥‥ごほっ」
「っ‥‥そうか。分かった、もういいしゃべるな」

そう言ってロイはを少し離れた場所へ運んだ。
そうしている内にもロイ達に向かって敵は撃ってきている。

「大佐危ない!」
後ろにいた中尉がロイに言った。

「くそっ‥よくもを」
ロイは憎しみを込めて指を鳴らした。

“パキン”
『今日使ったのはこれで2度目だな‥』

周りにいた敵が、一瞬で、消えた。


この一撃で残っていた村人達も、戦いを止め逃げていった。

「大佐、追いかけたほうが良いっスか?」
「いや、いい。それより…大丈夫か?何処に当たった?」

はホークアイなどに治療をしてもらっていた。
が、顔色がとても悪い。
「あ、大佐何かお腹の辺りで貫通してるらしいです」

「今のところ止血はしましたが、助かるかどうかは‥‥」
ホークアイが小声でロイに言った。

「少し二人きりにしてくれ」
「はい」


、痛むか?」
「はい、そりゃもう、ズキズキと。でも大佐、心配しないで、下さい」
は一言一言押し出すように話している。

「今は2人だからロイで良い。敬語も使わなくて良い」
「いや、良いです、このままで」
そう言ってる間にもの様子が悪くなってきていた。

「わたしが、死んだら、どうします?」
真剣な顔で聞いてくる。
それほどやばい状況だと言うことだ。

「死ぬなんて考えるな」
「答えて、下さい」

「私も」
ロイが言い切る前にが言う。
「死ぬ、なんて考えちゃ、ダメ、ですよ」

「どうしろと言うんだ!」
ロイは叫んでいた。
「わたし、の、お願い、聞いて、くれます?」
青白い顔をしながらも、にっこりと微笑んでいた。
「え?あぁ」

「ロイには、長生き、して、幸せに、なってほしい」
「分かった」

「わ、たしのこと、忘れないで、下さい。ロイの、恋人で、いられた、こと、嬉しかった」
ますます体調が悪くなってきた。
「はっ、何を言ってるんだ。忘れるわけがないだろう? 医療班と中尉こっちに来い。を診てくれ。」

「はい只今」

「最後の、お願い」
「最後なんて言うな」

中尉達が来た。

「ずっと、幸せ、で、笑って、いて下さい。わたしは、ロイの、笑った顔、に、惚れた、んだ、か‥‥ら」
の動きが止まった。綺麗な笑顔だった。

「!」
「大尉‥」
‥‥!」
ロイの頬に一滴の水が伝った。




  * * *




それからしばらく今回の件の書類などを片付ける日々が続いた。
『書類片付いて無いじゃないですか』
時々彼女の声が聞こえる気がする。
そんなことあり得ないのに。
ロイはそっと窓に目を向けて、透き通った青い空を見た。

「すまんな、。あの最後の約束守れなさそうだ。君が居ないと私はもう笑顔なんて作れない」

『笑った顔に惚れたんです』

また、聞こえた。
彼女は空からロイのことを見ているだろうか?



もう会うことは出来ないけれど、

の声を聞くことは出来ないけど、

それでも、彼女に見えるなら、



「私は笑って生きていくよ」


約束、果たせそうだ。


ずっと君を愛し続けるから。




END







終わった!!ついに終わった!
何かもう訳分かんないですね。
何よこの終わり方。くさいね。はぁ〜

死んじゃったし、ゴメンなさい。
ていうか初夢小説が死にネタってなんだよ〜;;
こんなの読んで下さって有難う御座いました。ホントに。

04/9/8 21:20

05/8/21 修正