「信史。お疲れ様」
「……。」
「信史…?
ねぇ、しょうがないじゃん。信史は頑張ったんだし」
「うるせぇよ!お前に何が分かるんだよ!」
ばんそうこう
三村信史、中学2年の夏。
中学バスケ部の地区大会。
当然、や信史の通う
城岩中学校のバスケ部も出場している訳である。
今日はその最終日で、
城岩中は今やっている試合に勝てば県大会へと出場が決まる。
試合残り時間5分弱。
35対35。
未だ激戦が続いている。
「三村っパス!」
「おぅ!」
パスで繋いでいくのだが、途中でカットされてしまう。
「ちっ!」
だんだんっだんだんっ
しゅっ……ぱすっ。
ピィッ!
「……あ…」
相手側に、点が入ってしまった。
「やべぇぞこりゃ…」
そして、なお相手の攻撃が続く。
しゅっ…がこっ。
今度は、入らなかった。
そしてすかさず信史はボールを奪い、
カウンターに移る。
「あがれー!」
信史は見事なドリブルで敵の間を抜けていく。
残り時間1分半…。
35対37。
『時間がない、もうコレで入れるしかないな。
とすると…』
頭の中で思考を巡らせて、出した答えは。
『―三点(スリー・ポイント)シュート!』
そして信史はゴールへ向かって、ボールを放つ。
が…。
バシッ!
「いってぇ!」
「信史っ!!」
が叫ぶ。
相手側が信史を突き飛ばした。
ボールはゴールへ入らない。
他の観客(主に信史のファン)からも、様々な声が発せられる。
「三村君になんて事するのよっ!」
「反則よ!」
ピィッ!
「ファール!城岩中ボール!」
今のはやはり反則と見なされ、城岩中のボールとなった。
「くそっあと二点なのにっ」
信史は今ので床に頬をこすってしまい、血が出ている。
しかしこんな事で諦める信史ではない。
『もう一度…』
けれども、物事というのは、上手くいかない物である。
ピピィィィ―…
「試合終了っ」
「そんな、嘘だろ…」
「畜生っ!」
「あと一歩だったのに!」
城岩中のチームはうなだれる。
信史とて例外ではない。
否、他のチームメイトよりも悔しさは大きいだろう。
三点が入っていれば・と。
「整列、礼っ」
「「ありがとうござっしたー」」
こうして、城岩中バスケ部の夏の大会は
終わってしまったのである。
試合終了後、は信史の元へと駆け寄る。
「信史、お疲れ」
「……。」
「信史…?
ねぇ、しょうがないじゃん。信史は頑張ったんだし」
「うるせぇよ!お前に何が分かるんだよ!」
「ごめん、信史。そんなつもりは…」
「あ……。」
の悲しそうな顔を見て、信史は少し冷静さを取り戻す。
は、落ち込んでいる自分を慰めてくれているのだ。
だから余計に、怒鳴ってしまった事を後悔する。
『おいおい、いつものクールで格好いい第三の男は何処いっちまったんだ…?
寄りによってに、八つ当たりするなんて』
「悪かった、怒鳴って…」
「え、あぁ良いよ別に。それよりも、
信史、血が出てる。平気?ちょっと待ってて」
そういって彼女は、バッグの中から何かを取り出す。
『救急道具…?』
「ほれ、ちょっと顔見せてみ」
信史は言われたとおりに、傷の部分を見せる。
それを見ては、あぁ、ただのかすり傷か・と言って
ばんそうこうを取り出す。
可愛いキャラクターのばんそうこうを。
「え、ちょっ!何それ!それ貼んのか?!」
「ん?おわっ、なんだこれ」
も、それが入ってた事に驚いたらしい。
「あ、そうか」
「なんだよ?」
「ほら、あたしこれ小さい頃から使ってたじゃん」
「使ってたっけか?」
「忘れてんの?
使ってたよ、あんたがバスケで怪我したときはいつも」
『あぁ、そうか』
信史が物思いにふけっている前で、は、
「最近信史は怪我しなくて、コレも使わなかったしね」
などと言って笑っている。
『第三の男(ザ・サードマン)が冷静じゃなくなって、八つ当たりをするのは、
(幼馴染み)の前だけなんだ』
「ま、良いや。コレ貼ろうか」
「まじかよ、もっと他の無いのかよ?」
「あいにく、コレしかありませんからねぇ」
『俺が、弱みを見せるのは、
この、優しい、俺の幼馴染み』
「信史」
ばんそうこうを貼り終えたが、呼びかける。
「あ?何?」
「次は頑張れよ!」
「……おう!」
試合で負けた事など、もう気が晴れていた。
次は、来年…。
* * *
「三村お疲れサン!…お前のソレ何?」
どうやら試合を見に来ていたらしい七原に、そう聞かれた。
頬に付けられた、可愛らしいばんそうこうの事を。
「コレか?」
「そうだよ、何ソレ、面白いんだけどー!」
「コレは、俺の幼馴染みサンが付けてくれたんだよ」
そう言った信史の顔は、少し照れた顔だった。
――― End ―――
あとがきんちょ
お題第1弾、ばんそうこうでした。
今、冬なのに何夏の大会なんか書いてんだよ。
って感じですが、そこはスルーの方向でお願いします。
なにしろ、私はバスケやっている人じゃないので、
試合とか大会とか、全然分かりません。
なので色々変な所がありますが、そこもスルーの方k(もう良い
ばんそうこうのキャラが何だったかは想像にお任せします。
でも、三村はまた来年、って思ってますけど、
本当はこれが最後の夏大だったんですよね。
3年の5月に…プログラムだから…。
あぁ、何かいきなりテンションが下がった。
では、ここまで読んで下さりありがとうございました。
05/1/23 22:15 リョウコ