「佐野清一郎クン、お誕生日おめでとう!!」
「ああ、おおきに」
「はい、プレゼントぉ!」
俺がそう彼女から手渡された包みは手にすっぽり収まるくらいのそりゃもうちっさなモンでして。
けど愛だけはこもってますから
2月6日。俺の誕生日。
「な、な、何やコレちっさいのぉ?! 開けるで?」
「どーぞ?」
「・・・」
出て来たのはアメ3つ。
俺、しばらく呆然。
「・・・あのなぁ」
「何やねん」
「コレが彼氏に渡すプレゼントなんかい?!」
「うっさいわアホ!こちとらこれからバレンタイン控えとんのじゃい!大量出費やでぇ?!」
「知ったことか!どうせお前友チョコとかゆうてそっちで金使って、俺には義理のちっさいチョコしかくれへんのやろが!」
確か去年のバレンタインはぎょうさん作ったクッキーの余りやったで。
よう覚えとるんやからな。
ってこないな話どうでもええねん。
「大体清一郎の誕生日がこんな時期にあるのがあかんねん!節分とバレンタインの間ってどないやねん!」
「節分大量出費にどう関係しとるん、適当なことゆうてるんやないわボケ」
「ボケとは何や、誕生日祝ってやってる人に対して」
「俺はコレを誕生日祝いとは認めへんからな」
「ゆうてろ」
誕生日にこんな言い争いするんもどうかと思うけどなぁ。
1つアメを食べてみる。
あ、美味い。
「…うまい」
「当たり前やろ、それ、清一郎が小さい頃好きだったアメやもん」
「ふうん。ほうなんや。どうりで懐かしい」
「うちにも1個頂戴」
「いーやーやー」
が伸ばす手からアメを守る。
絶対わたさへんで。
なんでプレゼントに貰ったもんわざわざ本人にあげなあかんねん。
「けーちー」
「お前にけち言われとうないわ」
「いやいやいや、ちゅーか聞いてくれへん?」
「何を」
「人にはなお金よりも大事なモン、あると思うねん」
何を言い出すかと思えば。
それがどないしたっちゅーねん。
「何やそれは」
「愛、や!世の中愛やで!ちゃんと清一郎のプレゼントにだって愛はこもってんねんで!」
「そ。そんでアメ3つ、愛で誤魔化しかい」
「そんなんちゃうけどー。や、ほんまは悪いと思うとるし…」
申し訳なさそうな顔されたら、言い返せなくなるやん、俺。
「…」
愛。
愛ねぇ。
ちっと考えてみる。
つまり―…
「ま、金ないんやろ?んで、世の中愛やっちゅーことやろ?」
「イェス」
今俺の目線の先にあるモノ。
彼女。俺の。
「何見とるん…?」
「それなりの愛を頂けるんなら、まあ許してやってもええかなーなんて」
「お聞きしマスが。清一郎の欲しい物…何?」
「ほんまはー、温泉旅館の旅行券とか欲しかったんやけど」
「高いわ!」
「つっこむなや。お前金ないっちゅーし、しゃあないから」
「しゃあないから?」
「の愛、たっぷり頂きたいデス」
「えっと?つまり…?」
「、頂きたい、な?」
だって金ないんやもんなー。
俺の所為やないでー。
ほら良くゆうやん?身体できっちり払って貰うでーって。
な?
「・・・っ!けーだーもーのー!!やめろやめろやめろ!待て!そーゆーのほら未だ早いんとちゃう?!うちら中学生やし?な、今日は止めとかへん?プレゼント小さかったんはほんま謝るから。頼むで、清一郎!!」
「おーおー、必死になっちゃってかわいのぉ」
「せいいちろぉ…!」
なんて。
「…冗談にきまっとるやん」
「へ?」
「あーほ、俺かてお前なんか頂きとうないわ」
「それどうゆう意味」
「エロ本読む方が何倍もましや」
「な、な、なにぃ!エロ本持ってんのか?!」
つっこみ所そこかい…。
「ワンコにもろた。思春期真っ盛りの健全な中学生男子ですし俺」
「ワンコ…ワンコ…あ、あの犬のお兄さん!よくそんなもん…」
「、可愛げないんやもん。おまけに色っぽさも。おかげで欲求不満やで?」
「うっさいな変態!そんなコト言うんならええわ!うち、犬のお兄さん所行く!」
「はぁ?」
「お兄さんの方が優しくしてくれそうや!大人やしな!」
何もそこまで怒るかフツウ…?
つか、ワンコの所…。
瞬間、何も言い返されへん。
「あーもう、悪かった悪かった!俺が悪かったわ!」
「嫌ー触んな!!こんな獣と一緒におられへん!キケンやキケン!きゃー助けてー!」
「分かったもう良い!このプレゼントで良い!おおきに!」
「へ、マジ?」
「マジマジ大マジ。許したるわ…!せやからワンコん所行くんはやめろ…嫌や」
恥ずかしいこと言わせやがってアホ。
「アリガト清一郎!大好き!」
「あーあー分かった。俺も好きやから。抱きつくな」
「愛やもん!ええい、ほっぺにちゅーしてやる!」
頬に柔らかい感触。
なんつー実行の速さ…。
「えへへ、キッスのプレゼント〜」
「きしょ」
「なんつったぁ?!」
「何も」
ほんまは、、可愛い。
めっちゃ可愛い。
けど、そんなん、恥ずかしゅうて言えへんやん。
プレゼントなんて、ほんまはいらへんもん。
が、ただ、ここにいて、話して
「清一郎、好き。大好き。誕生日おめでとう。これがうちの愛や」
ゆうてくれて。
もう、これでええ。
「ねえ、清一郎。来年はちゃんとしたプレゼントあげる…」
「ええよ、そんなん気にせんで。ほら、やっぱ来年こそお前で」
「黙れ獣っ!!!」
ぱぁぁぁぁん。
2月6日。俺の誕生日。
プレゼント。アメ3つ。愛。ビンタ。
こんだけ貰えりゃ十分か。
06/02/05 23:14